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ヨーロッパ建築レポートの第4回は美術館と屋外空間についてのレポートである。
デュッセルドルフの郊外に、広大な湿地を開墾して一大美術公園にしたインゼル・ホンブロイヒ美術館がある。敷地内には彫刻家アーウィン・ヘーリッヒが設計したパビリオンがまるでミニマル彫刻のように点在している。この点在するパビリオンは遊歩道で結ばれており、一つのパビリオンで作品を鑑賞し、公園を散策してはまた次のパビリオンに至るような配置がなされている。遊歩道の途中には屋外彫刻も展示されており、ここは自然と一体となった芸術空間が展開されているのである。
依然、群馬県の伊香保温泉に程近い場所にある原ミュージアムを訪れたことがあるが、面白かったのは敷地の入口でチケットを買ったら後は美術館の作品を鑑賞したり、疲れたら外に出て休憩したり、また美術館に戻ることもできる。建物と外部に管理上の境界がなく、芸術を楽しむ空間として精神的にも開放されている。今回視察したインゼル・ホンブロイヒ美術館はこれをさらに拡大したようなかたちになっており、人間にとって最高に気持ちのいい空間を作り出している。また、ここでは運営方法もユニークだ。各パビリオンの出入り口は季節のいい時期には開放されているそうだ。自然がそばにあるだけにけものや鳥が勝手に出入りするらしい。おそらく虫も入ってくるだろう。では、置いてある作品は大したものがないかといえばそうではない。現代美術の作品が多いが、どれも一流品で買えばかなりの額を要するだろう。金勘定をしてしまう自分はまさに日本人なのだと反省せざるをえないが、要するに金勘定のないおおらかさがここにあるのだ。自然が入ってきて建物も作品も朽ちていけばよい。そんな気持ちのおおらかさがさらに我々体験者の心を開放してくれるのだ。
もうひとつ、これからの地方の公共建築もしくは公共財産のあり方にとって、非常に参考になると感じたことがある。一言でいえば「ローコスト」である。もちろんこれは安かろう悪かろうの意味ではない。素材を吟味し、適材適所に材料を使い分けるという意味である。ここで重要なのは、どのような吟味がなされるかということと、素材の構成にいかに調和を持たせるかということだ。料理と一緒で、豪華な材料を使っても、調和がなければご馳走にならないのだ。では具体的にこの美術館ではどうしているかというと、以下のことが挙げられる。各パビリオンの形を単純にし、床、壁、屋根に使う素材を統一する。各素材はどこでも手に入り、高度な技術を要しないで施工できるものとする。どの素材も古くなったときに味わいの出るものとする。特にこれが重要で、日本のように工業製品で埋め尽くされた建物では新しさ以上の価値が生まれないということを再度考えるべきであろう。ちなみに、床は大理石(ヨーロッパでは安い)、壁は煉瓦で窓はほとんどなく、鉄骨剥き出しのフレームにガラス屋根という構成である。特に一番興味をひいたのは、公園の真中あたりにあるレストハウスで、家具や照明が中古品かローコストの素材でできているということだ。しかし、ここは決して貧相な空間ではなく、建物の素材感と調和し、さらに自然と一体化したとても豊かな空間である。逆にいえば、自然が豊かだからこそ、建物はむしろ控えめぐらいがちょうどよいということだろう。
我々が住む地方のまちは、都会ほどまちが密集していない分、空間にゆとりがある。このゆとりを生かすことができれば、都会とは違うローコストで豊かな空間を作り出すことができるのではないかと考える。それには、まず硬直した頭の構造を少しずつ解きほぐす訓練をすることだろう。
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