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「ログハウスの設計をして欲しい。」岡山の田舎に住む大学時代の同級生からそんな電話があったのは昨年の5月である。実は、この同級生はログビルダー(ログハウスの大工)で、基本的には自分で設計して建てるところまでやる。それがわざわざ遠く離れた山口まで設計の依頼をしてくるというのはどういう訳か?早速依頼主の人となりを聞いてみた。なんでも、相当の自然派で、環境問題にも並々ならぬ意識を持っているとのこと。そして、丸太小屋に住むという押えきれない夢が溢れ出しているらしい。「とにかく建て主が書いた平面図があるのでまずはそれを見て欲しい」ということで、ファックスで送られてきた図面を眺めてみた。
図面を見ると、2階建ての50坪ぐらいの家である。そこまでは普通なのだが、吹抜けになったリビングには薪ストーブが据えられており、その薪ストーブの炎を楽しむ食卓には掘りごたつがはめてある。さらにリビングの北側には六畳の和室があり、その真中には囲炉裏が切ってある。極めつけはこの多彩な火元のあるリビングの真中に、頭をぶつけないと上がれないらせん階段が鎮座しているのだ。そして、夢はこれだけにとどまらず、広々としたウッドデッキや、岩で作った露天風呂など何から何まで満開状態だというのだ。なるほど、これほど盛り沢山な状況をまとめるのは一苦労かもしれない。苦労の多い仕事ばかりしてきた自分としては、ここが腕の見せ所である!こうしてまた性懲りもなく設計の仕事を引き受けることになった。
まずは、この満開な状態から建主の一番大事にするものを絞り込まなくてはならない。
そこで考えるのはやはりリビングの状況であろう。薪ストーブに掘りごたつ、そしてらせん階段がオブジェとして飾られたリビングを、囲炉裏を囲んで和室から眺めるという図はどうみても不自然である。これは「自然派」を地でいく建主のポリシーに反するのではないか。建主との長時間に及ぶ議論の末、薪ストーブを中心にした生活のイメージを最優先することになった。打合せは毎回深夜におよび難産の末にようやくまとまった。工事は、昨年の秋から雪の積もる冬をはさんで約9ヶ月かかり、この夏にようやく完成した。結局予算の都合もあり、ウッドデッキと露天風呂はご主人が休みを利用して自作することになっている。(掘りごたつは薪ストーブとけんかするとして、辞退いただいた。)
先日お披露目があり、久しぶりに現地に赴いた。鳥取と岡山の県境に近い谷あいにある現地は、ログハウスがはまる風景としては絶好の場所である。バーベキューパーティーに集まった建主の職場の同僚たちは、自然があふれる環境と、その自然に抱かれたこの住まいを満喫して、口々に「帰りたくない」と言っていた。確かにこの家が別荘ならば、こんな贅沢はないだろう。しかし、この建主は雪の積もる寒い冬もここで過ごす。自然の持つやさしいところも厳しいところも受け入れて、なかば自給自足をしていこうというのだ。設計の打合せをしているころは、正直言って面倒な仕事にあたったと思ったが、出来上がってみると、「この建主にしてこの家あり」と実感する。まさにあっぱれな建主である。
このような状況に比べて、わがまちはかなり住みよい。地方生活を楽しむためのほんのいろはと思えばよい。
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